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研究内容

Belle / Belle II実験

Belle(II)国際共同実験での研究

われわれN研究室は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)で進行中のSuperKEKB/Belle II実験を基幹大学グループとして推進し、素粒子標準理論の高度精密測定と、それを超える新物理の探索に焦点を当てて研究を進めています。前身のKEKB/Belle実験は、世界のBファクトリー実験をリードし、B中間子でのCP対称性の破れ(粒子と反粒子に働く物理法則の違い)をはじめとする素粒子物理の重要な基本課題の解明に活躍してきました。CP対称性の破れは、ノーベル賞を受賞した小林益川理論によって説明されており、N研では、その検証に必要となる様々な測定を行ってきました。より高い精度で物理現象を探究するために、ビーム強度を50倍にしたSuperKEKB/Belle II実験の本格運転が2018年より始まります。これまで行ってきた測定器建設に引き続き、データの取得と解析を進めていきます。

世界最高強度のコライダー実験

KEKB加速器は、8GeVの電子と3.5GeVの陽電子ビームを高頻度で衝突させ、B中間子とその反粒子である反B中間子などを大量に対生成させる装置です。衝突点に設置されたBelle測定器では、瞬時に起こるB中間子などの崩壊過程が精密に記録されます。1999年実験開始以降、KEKBのビーム強度は年々増加し、最高ルミノシティは 1.7x1034cm-2s-1 、2010年運転終了までにBelleで記録されたB中間子対の総数は9億対を超えました。この性能は、米国スタンフォード線形加速器センターに設置された同様の施設(PEP II/BaBar実験)の記録を凌駕する世界最高強度のものです。N研では、この人類未踏の世界最高強度でのビーム衝突によって得られる大量データを用いて第1線の素粒子研究を行ってきました。

研究テーマ

N研では、B中間子崩壊やタウレプトン反応を用いた素粒子標準理論の精密検証とそれを超える新しい物理の探索、および、ハドロン反応を用いたQCD物理の解明などを主な研究テーマとして行っています。
B中間子の崩壊で新しい物理を探索する方法は色々あります。N研で独自に解析を行ったB→τν崩壊崩壊は、特に超対称性などの理論が予言している荷電ヒッグス粒子に感度が高い崩壊で、もし荷電ヒッグス粒子が存在すれば、その崩壊率が標準理論の予言値から変化します。但し、この崩壊は終状態に測定できないニュートリノが複数できるため、検出は極めて困難とされてきました。我々はこの崩壊の探索に新しい解析手法を適用して、5億におよぶB崩壊サンプルの中から、B→τν 崩壊と解釈される事象を見つけ出しました。KEKBの高い強度とデータ解析の工夫によって今回の発見が可能となったと言えます。我々の測定結果は荷電ヒッグス粒子の存在可能な質量領域に強い制限をかけました。さらにN研では、B→τν崩壊と同様に荷電ヒッグス粒子に感度が高いB→D*τν崩壊の測定を進めてきました。
Bファクトリーでは、タウレプトン対生成反応が、B中間子生成頻度と同程度起こります。その大量のタウレプトンを利用して、レプトンフレーバー非保存崩壊現象の探索などを世界をリードしておこなってきました。現在、新物理に対して世界最高感度レベルで制限を与えています。
また、Bファクトリー実験では、B中間子のみならずcクォーク対も大量生成することが可能で、多種多様な素粒子データが取得できます。Belle実験では、X,Y,Zと呼ばれる新しいハドロン状態を数多く発見し、重いクォーク系での強い相互作用理論に対し、さまざまな情報を与えました。

Belle II実験へ

このように、Belle実験において取得した大量のデータを用いて、素粒子標準理論におけるCP対称性の破れを証明し、さまざまな理論予想を高精度で確認してきました。しかしながら、B→D*τν崩壊などのいくつかの現象において、標準理論からのずれが示唆されつつあります。そのため、KEKB/Belle実験の50倍のデータを取得することが可能なSuperKEKB/Belle II実験を実行し、より高い感度での新物理探索を行おうとしています。

N研がBelle II実験で取り組んでいる新物理探索についてはYouTubeチャンネル「名大研究フロントライン」にて特集した動画を公開しています。実験現場の最前線で収録された映像とともにその研究内容を紹介しており、飯嶋教授をはじめとして日々研究に取り組んでいるN研のスタッフや学生が出演し直接解説していますので、こちらもぜひご覧ください。

『Vol.19 名大N研、宇宙138億年の謎に挑むーBelleⅡで新物理探索ー』(5分52秒)
制作・著作:名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部

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