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研究内容

検出器

新型粒子識別装置「TOPカウンター」

Belle II実験では,「小林・益川理論」を証明したBelle実験に比べより多くのB中間子を観測します。それと同時にB中間子をより精密に測定できるように観測装置の改良も行います。そのアップグレードの目玉の一つがN研が長年開発を行ってきた新型粒子識別装置「TOPカウンター」です。

粒子識別とは?

B中間子は生成してすぐに様々な粒子に崩壊しますが, それら一つ一つの種類の同定を行う必要があります。中でも「π中間子」「K中間子」と呼ばれる粒子は, 区別が難しいのですが, B中間子の崩壊を調べる上で正確な識別が欠かせません。TOPカウンターにより, これらの粒子の識別を正確に行うことで, 測定の精度を飛躍的に向上させます。

最新の技術を用いた新型測定器

TOPカウンターは主に厚さ2cmの石英板とその方端に取り付けたMCP-PMTと呼ばれる光センサーからなります。粒子が石英板を通過するとその飛跡に対して円錐状に「チェレンコフ光」と呼ばれる微弱な光が発生します。その開き角がπ中間子とK中間子で微妙に異なります。従って石英板中を全反射しながら伝播していく際に経路差が生まれ, 光センサーに到達する時間に差が生じます。この差は数百ピコ秒(100億分の1秒)と非常にわずかです。この時間差を測るためN研が浜松ホトニクスと共同で, 光センサー世界最高の時間測定性能を持つMCP-PMTを開発してきました。これにより光の到達時間を正確に測定ができるため, 粒子を明確に識別することが可能になります。

N研での測定器開発

Belle II測定器にTOPカウンターを組み込み終えた時の記念写真。
取り付け時の詳しい様子はこちら

N研のグループは, 海外の研究者・技術者と協力し, TOPカウンターの設計や実機の建設行ってきました。2016年の5月にBelle II測定器への組み込みを終え, 現在は組み込んだTOPカウンターが十分に性能を発揮できるよう, その運転や較正, 性能試験を進めています。

LHC—ATLAS実験のトリガーシステム開発・運転・改良

陽子・陽子衝突の事象には無数の種類があり、それらは確率的に発生します。素粒子の質量起源を精査し、超対称性などの新物理を探索するためには、ごく稀にしか発生しない事象を効率的に選び出すトリガーシステムが重要な役割を担います。
N研では、高運動量ミューオンを終状態に含む事象を選別するミューオントリガーの構築および運転に取り組んできました。飛来するミューオンを25ナノ秒ごとに識別可能な多線式ガス検出器TGC(図1)の電子回路を開発し、綿密な調整と安定的な運転を行うことで、素粒子質量の源であるヒッグス粒子の発見を導きました。また、トリガーで選別する事象のリスト製作を主導し、多彩な新物理探索を実現してきました。

2024—2026年にLHC加速器・ATLAS検出器の大幅な改良を行い、現行実験の設計値の7.5倍の頻度で陽子・陽子衝突を発生させる次世代実験を開始する予定です。N研では、より効率的な事象選別を行うために、改良型ミューオントリガーの開発を行っています。高い放射線耐性を持ち毎秒3テラバイトのデータ通信を行えるシステムを構築するために、試作機の製作および動作検証を進めています(図2)。また、より高い精度でミューオンの運動量を測定できる前段ロジックの開発や、マルチスレッドを用いた後段判定ツールの開発を進めています。

以上のように、N研は、確かな技術力を武器に、最先端の技術を駆使したトリガーシステムの開発・運転・改良を推進しています。これらを実現することで、世界最高エネルギーの陽子・陽子衝突による素粒子物理学の開拓を強く支えています。

図1:LHC—ATLAS実験のTGC検出器。高さ22メートルの巨大な装置です。
図2:高い放射線耐性を持つIGLOO2集積回路の試験ボード(上図)および高速データ通信機能を持つTGC検出器前段回路の試作機(下図)。

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