平成22年度においては、特に、名古屋大学において独自開発を進めている次世代粒子識別装置である「TOP Counter」の実装に向けて、マイクロチャンネル内蔵型光電子増倍管(MCP-PMT)の量子効率の改良と、プロトタイプ検出器のビームテストによる性能評価を行った。MCP-PMTの改良については、浜松ホトニクス社が通常の光電子増倍管で実用化に成功していたスーパーバイアルカリ光電面を採用したMCP-PMTの試作と性能評価を行い、400nmの波長で28%程度の量子効率が得られることを確認した。この改良により、従来のマルチアルカリ光電面の場合と比較して、チェレンコフ光の検出数を20%向上させることが可能となる。さらに、開発したバイアルカリ光電面MCP-PMTの寿命測定を行い、1 C/cm2以上の出力電荷までの寿命があることを確認した。これは、Belle-II実験で7年以上の寿命があることに対応している。さらに、Belle II 実機用MCP-PMTの仕様を決め、量産を開始した。ビームテストについては、Belle II TOPカウンターの実機大に近い40cm幅の石英輻射体と角型MCP-PMTを用いたプロトタイプを製作して、CERN SPSの120GeVπビームを用いたテスト実験を行い、予想通りの検出光子数が得られていること、さらに、フォーカスミラーの導入によって波長分散効果による時間分解能の悪化が抑制されることを確かめた。
また、Belle II 実験のエンドキャップ部に使用予定の「エアロジェルRICH」の開発においては、エアロジェル輻射体の大型化(11cm×11cm から18cm×18cmへ)を進め、ハイブリッド型光検出器(HAPD)のAPDのシリコン層の構造を改良して、中性子耐性の強化を行うことに成功した。
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