文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究:多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究

新ハドロン サマースクール

新学術領域研究「多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究」 (略称:新ハドロン)では大学院生等の若手(と自負する)研究者を対象に、 ハドロン物理をテーマにしたサマースクールを開催します。実践をとりこみ、 研究現場の一端を学べることを目指しています。多くの方の参加をお待ちしています。

サマースクール企画、計画研究E0(理論班)阪大RCNP 保坂 淳

第2回 新ハドロン サマースクール ― 基礎から実践まで ―

  • 日時:8月9日(火)−12日(金)4日間
  • 場所:大阪大学吹田キャンパス / 銀杏会館
  • 講義/実践演習テーマ:
    1. カイラル有効模型とスキルミオン
      担当:原田正康(名古屋大)
    2. ハドロン反応における共鳴状態
      担当:保坂淳(阪大RCNP)、永広秀子(奈良女子大)
    3. ホログラフィック・ゲージ理論入門
      ─ 超弦理論がつなぐ高次元重力とハドロン物理 ─
      担当:中村真(京大理)
    セミナー講演
    若手による最近のハドロン物理に関する4テーマ程度を予定します。
  • 参加申込:
    参加希望者は以下のエクセルまたはcsvを添えてE-mailで

    7月15日(金)までに
    安井繁広
    shigehiro.yasui_@_kek.jp(_@_を@に変えてください)

    宛に申し込みください。メールのタイトル(件名)を 「サマースクールの参加申し込み」として下さい。
  • 講義/実践演習テーマの説明:
    1. カイラル有効模型とスキルミオン
      担当:原田正康(名古屋大)
      QCDのラージNc極限は、メソンの弱結合理論と成り、バリオンはその理論に 存在するソリトン解として記述されます。1960年代、T. Skyrme は、 ボゾンであるπ中間子のみを含む非線形シグマ模型を用い、そのソリトン解に よってフェルミオンであるバリオンが記述出来ることを示しました。 この方法は最近では、ホログラフィックQCD模型におけるバリオンの 記述に応用されると共に、スキルミオン結晶など物性分野でも応用されています。 本課題では、このボゾン模型でフェルミオンを記述する方法を、カイラル対称性の 自発的破れに基づく有効模型の構成法と共に習得することを目指します。 まず、カイラル対称性の自発的破れに基づいて擬スカラー中間子を含む 非線形シグマ模型の構成方法を学びます。そして、その非線形シグマ模型に おけるソリトン解を求め、量子化することによりバリオンを記述することを 確認します。次に、非線形シグマ模型にベクトル中間子を含めた隠れた 局所対称性に基づく有効模型の構成方法を学び、その模型でのソリトン解を 用いたバリオンの記述を実践する。
    2. ハドロン反応における共鳴状態
      担当:保坂淳(阪大RCNP)、永広秀子(奈良女子大)
      現在ハドロン物理で興味が持たれている多くの状態は励起状態にある。 この研究を進めていくにあたり、ハドロンの散乱現象と、その解析によって 共鳴状態を探索することが重要な研究の手法になる。さらに見つかった 共鳴状態と様々なモードとの結合を調べることによって共鳴状態の内部構造に ついて知見を得ることが出来る。この課題では、散乱理論の基本的な性質から 出発する。次に散乱行列の極として、束縛状態や共鳴状態が出現する機構を 学ぶ。そして、その内部構造によって、散乱行列がどのように表現されるかを 具体的な例題を用いて調べる。発展的な例題として、近年話題になっている、 ハドロン分子的な構造をもった状態と、クォーク多体系としての成分 (ワインバーグの言葉ではelementary)との混合について調べる。 散乱振幅をエネルギーの関数としてプロットしその特徴をみる。また、 2次元の複素平面上で極を表現し共鳴状態の性質を引き出すことを試みる。
    3. ホログラフィック・ゲージ理論入門
      ─ 超弦理論がつなぐ高次元重力とハドロン物理 ─
      担当:中村真(京大理)
      単純な基礎方程式から複雑多様な現象を生み出すQCDのダイナミクスは、今なお 素粒子・原子核理論の一つの中心的研究課題となっている。最近、QCDに類似の 非可換ゲージ理論を非摂動的に解析する手法の一つとして注目されているのが ゲージ・重力対応である。この講義の導入では、ゲージ・重力対応は決して ブラックボックスではなく、非常に自然な論理の帰結であることを示す。さらに 幾つかの具体的計算例を示しながら、ゲージ・重力対応における基本的計算手法を 示してゆく。昨年度はゲージ理論プラズマのエネルギー運動量を繰り込みに 注意しながら計算するとともに、プラズマ中を運動するクォークのエネルギー散逸を 計算した。本年度は、昨年度あまり触れることのできなかったWilson loopの計算や ハドロンスペクトラムの計算について、本年度初めて参加する参加者もフォロー できる形で触れたいと考えている。
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