名古屋大学N研ATLASグループ

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2010年11月08日:2010年の陽子・陽子衝突データ収集を終了。重イオン衝突データ蓄積へ

2010年末までの瞬間ルミノシティーの歴史
2010年末までの積分ルミノシティー歴史

  LHC-ATLAS実験は、2010年11月4日、2010年に予定していた陽子・陽子衝突実験を全て終了し、積分ルミノシティーでおよそ45 pb-1の物理データ蓄積に成功しました。特に、10月に入ってからは、10月26日のWhat's newにも記したように、順調にルミノシティーが向上し、瞬間ルミノシティーで2×1032 cm-2 s-1を超えることにも成功しました。グラフは、2010年3月30日より開始した今年のデータ収集状況を瞬間ルミノシティー(左図)と積分ルミノシティー(右図)で示したものです。グラフの傾きがどんどん急な右上がりになっており、これはそれだけ順調に日々ルミノシティーが向上し、ゆえに、日々より多くの物理データが収集されたことを表しています。そして、このデータをATLAS実験グループは解析をし、人類が20世紀中をかけて発見したほぼ全ての素粒子をわずか1年足らずのデータで再発見しました。2011年から、いよいよ、新しい物理の探索に本格的に挑んでいきます。

重イオン衝突事象をATLAS検出器で捉えた!!

  2010年の陽子・陽子衝突実験が終了したと言っても、LHC-ATLAS実験の活動が終わった訳ではありません。LHC実験では、陽子を衝突する実験とは別にALICE実験などが主となり、重イオン(鉛イオン)衝突実験が行なわれています。2010年12月から2011年1月に計画されているシャットダウンに突入する前に、世界最高エネルギーの鉛イオン衝突が主な活動になります。そして、11月8日に、鉛イオン衝突に成功しました。 ATLAS 検出器でも一度の衝突事象で生成された1,000本を超える飛跡を捉えるなど、図のような事象の観測に成功しました。これらの速報は、CERNプレスリリースにも記されております。

2010年10月26日:順調にルミノシティー向上。世界最高エネルギーデータを蓄積中

高エネルギー加速器素粒子実験をする上で重要なパラメーターは、衝突エネルギーとルミノシティーです。LHC加速器は世界最高エネルギーである7TeVの陽子陽子衝突を実施しています。未知なるエネルギーでにおける新素粒子を発生させ、捉えるために衝突エネルギーは重要な要素です。そして、そのエネルギーで生成した新素粒子の発生・測定を確実な物とするために、ビーム輝度の指標となるルミノシティーが重要な要素となります。陽子ビームを加速器の中に沢山つめ、収束させて、衝突させれば、それだけ沢山の新粒子を生成させる反応を取得することが可能になります。新素粒子の目撃証拠を増やして、新粒子の存在を誰が見ても確実なものとするために、このルミノシティーが重要な要素になるわけです。LHC加速器は最近、2×1032 cm-2 s-1のルミノシティーを達成しました。これまでに発見された素粒子の中で最も重いトップクォークの対生成事象を年間160,000事象以上生成するだけの能力です。これは2010年の当初目標を上回るものであり、2011年の運転と、そのデータを用いた物理結果が益々楽しみです。期待していて下さい。

2010年7月21日:First Top quark candidates

7TeV 衝突中で観測された トップクォークが電子と多数のジェットに崩壊する事象候補
7TeV 衝突中で観測された トップクォークが電子、μ粒子、そして、bクォークジェットに崩壊する事象候補

  LHC-ATLAS実験は、既知の素粒子の中で最も重たいトップ・クォークの対生成事象候補を9事象捉えました。ATLAS実験では、陽子・陽子衝突によってトップ・クォークと反トップ・クォークが生成します。トップ・クォークは、ほぼ100%の確率でWボソンbクォークに崩壊します。Wボソンは、約10%がミュー粒子ミュー・ニュートリノ、約10%が電子電子・ニュートリノ、約10%がタウ粒子タウ・ニュートリノ、そして、約70%は2つのクォーク対に崩壊し、検出器に信号を残します。そして、bクォークはbクォークジェットとしてATLAS検出器で捉えられます。2つのトップ・クォークが以上の崩壊様式に従うので、トップ・クォーク対生成の明らかな信号は、”1本のレプトン(電子またはミュー粒子)と4本のクォーク・ジェット(うち2本がbクォーク・ジェット)”、””2本のレプトン(電子またはミュー粒子)と2本のbクォーク・ジェット、”6本のクォーク・ジェット(うち2本がbクォーク・ジェット)”となります。

  上の図の最初のイベント・ディスプレーは、電子と多数のジェットに崩壊したトップ・クォーク対生成事象の候補です。左の絵で下に向かっているオレンジの線は緑色で示す電磁カロリーメーターに大量のエネルギーを残しているので電子候補であると言え、この電子の他に、クォークから生成したと思われる多数のジェットを観測する事ができ、トップ・クォーク対生成の有力な候補事象だと言えます。

  2つ目のイベントディスプレーは、電子ミュー粒子と複数のジェットに崩壊したトップ・クォーク対生成事象の候補です。ミュー粒子検出器にまで到達している赤色の線がミュー粒子、電磁カロリーメーターにエネルギー(緑色で図示)を残しているもう一本の赤い線が電子を示します。その他にも複数のジェットがあり、そのうちの一本はbクオークジェットであると言えます。よって、これも非常に有力なトップ・クォーク対生成の有力な候補事象だと言えます。

  奥村君は2本のミュー粒子に崩壊するトップ・クォークの最初の事象候補、高橋君は、タウ粒子に崩壊するトップ・クォークの最初の事象候補を見つけようと日々研究を続けています。これらが見つかったら直ちに取り上げようと思います。

2010年7月8日:First Z boson candidates

7TeV 衝突中で観測された Z ボソンが電子・陽電子に崩壊する事象
7TeV 衝突中で観測された Z ボソンがミュー粒子・反ミュー粒子に崩壊する事象

LHC-ATLAS 実験で測定された Zボソン事象が二つのレプトン・反レプトンの対に崩壊する現象が測定されました。左はZボソンが電子陽電子に崩壊する事象の候補で、右はZボソンがミュー粒子反ミュー粒子に崩壊する事象の候補です。質量 91 GeV の中性粒子である Z ボソンを、反対符号の二つの荷電レプトン信号によって検出しています。 [[Z ボソン>Zボソンとは]の質量は過去の実験(LEP実験等)で正確に測定されていて、その崩壊様式もよく理解されています。これから LHC-ATLAS 実験は良く理解されている Z ボソンに由来する粒子を用いて、高い運動量の粒子検出のための実機の調節に入ります。

Zボソン電子陽電子に崩壊する事象のイベントディスプレイのアニメーションはこちらからご覧いただけます。

2010年4月27日:first big jump of the LHC luminosity

LHC-ATLAS実験におけるルミノシティ

3月30日の7TeVでの衝突以来LHC加速器の運転は順調に進み、加速器の調節も始まっています。 目下の目標は、ビームの衝突頻度を上げて、より多くの衝突事象を観測すること。ビームの衝突回数の合計は積分ルミノシティーというパラメタであらわされますが、 4月23日から4月25日にかけての実験で、衝突点においてビームをよりよく絞ることに成功し、三日間だけで、これまでのデータと同じ回数の衝突事象を記録しました。

このようなマイルストーンを重ねて、今年末までに、3月30日から4月25日までに収集したデータのさらに10万倍の衝突データを収集する予定です。

2010年3月30日:世界際高エネルギー7TeV での実験開始!

ATLASで捉えたWボゾン事象の候補

2010年3月30日、実験開始予告通りに、LHC 加速器は世界最高となる重心系エネルギー7 TeVでのビーム衝突に成功しました。CERNからプレスリリースが発表されています。また、ATLASホームページには、イベントの様子がご覧いただけます。特に"Animation"は、検出器の事がよくわからなくても衝突のイメージが分かりやすく楽しめるとおもいます。


Last-modified: 2010-11-11 (木) 02:33:50 (2590d)