ニュートリノとは

基本情報

電子ニュートリノ

質量< 225eV
電荷0
スピン1/2
提唱者Pauli, 1931 年
発見者Reine, Cowan. 1956年

μ(ミュー)ニュートリノ

質量<0.19 MeV
電荷0
スピン1/2
発見年1962年
発見者Dandy, Gaillard, Goulianos, Lederman, Mistry, Schwartz, Steinberger

τ(タウ)ニュートリノ

質量<18.2 MeV
電荷0
スピン1/2
発見年2000年 (有為な信号事象の報告。実験は1997年の5ヶ月)
発見した実験Tevatron を用いた Direct Observation of NU Tau (DONUT)実験

素粒子標準模型での位置づけ

素粒子標準模型において、ニュートリノは中性のレプトンに相当します。 さらに電子ニュートリノ、μニュートリノ、τニュートリノはそれぞれ電子、μ粒子、τ粒子とペアとして扱われます。

また、模型の形式上、光子やグルーオンは質量がゼロでなければならないのに対し、 ニュートリノの質量に制限はありません。その質量測定の実験が進められていますが、 現状は上限値が敷かれているにとどまっています。

歴史 : ニュートリノの発見

電子ニュートリノ

電子ニュートリノは、ベータ崩壊での電子のエネルギー分布を説明するために導入されました。

原子を構成している陽子と中性子の固まり:核子には、 原子の種類 -- 陽子と中性子の割合 -- によって不安定なものがあります。 そのような核子の中では安定な状態へと移るために、 中性子が陽子に変化し電子を放出するベータ崩壊を起こします。 このベータ崩壊が、その見た目どおりに、中性子から陽子と電子への二体崩壊を起こしているとすると、 エネルギー・運動量保存則より、電子のエネルギーは唯一に決まります。 ところが実際は、電子のエネルギー分布は広がりを持っていました。

この問題に対してパウリ(Pauli)は電磁相互作用をしないために観測にはかからない 中性粒子ニュートリノ"ν"が、ベータ崩壊の際に n → p + e + νという形で放出されており、 三体崩壊を起こしているためという仮説を立てました(1931年)。

このPauli の予言するニュートリノの存在を初めて確認したのは Reines と Cowan による実験でした(1951年)。 ニュートリノを陽子にぶつけた際に 中性子と陽電子が生成されることをみることができればニュートリノの存在を証明できたと言えます。 彼らは、大量のベータ崩壊を起こしている核反応炉をニュートリノ線源とし、 塩化カドミウムと水のターゲットをシンチレータで挟んで配置し、 生成された陽電子が電子と対消滅し生成する光子と、 中性子が原子核に捉えられた際に放出する光子を検出することで、 ニュートリノ反応を特定しました。

μニュートリノの発見

μ粒子が発見された際、その崩壊事象に含まれるニュートリノ(現在のニュートリノ)が、 核子のベータ崩壊で放出されるニュートリノ(電子ニュートリノ)と同じ物なのか、という事が論点になりました。

両者が区別されるかどうかは、ニュートリノを核子と反応させることで調べる事が出来ます。 もし両者のニュートリノに区別がないのであれば、 μ粒子から作ったニュートリノを核子と反応させたときに

ν + n -> μ + p

と同様に

ν + n -> e + p

も期待できます。

Ledermanらは、 Brookhaven AGS の15 GeV 陽子をベリリウムターゲットに当てπ粒子を経てμ粒子を作り、 その崩壊から得られるニュートリノをソースに、核子との反応を測定しました。

"Observation of High-Energy Neutrino Reactions and the Existence of Two Kinds of Neutrinos."

ニュートリノビームは、 μ粒子やメソンを取り除くために13.5 m の鉄のシールド(17GeV のμ粒子を止めることができる)に通した後に、 2.5 cm の厚さのアルミニウム板を9層重ねた構造からなるスパークチェンバーを10段重ねた、10トンターゲットの検出器に入射します。 ニュートリノがアルミニウムの核子と反応して生成された電子とニュートリノは スパークチェンバーの応答から区別することが出来ます。

μ粒子生成事象は5事象と見積もられた宇宙線事象をひいて29事象が得られたのに対し、 電子生成事象は見られませんでした。 本結果より、二つのニュートリノは等価ではなく、 現在で言うところの電子ニュートリノ、μニュートリノとして区別して扱うべきであると結論づけられました。

τニュートリノの発見

1975 年にτ粒子が発見されると、それとペアとなるτニュートリノの存在が期待されました。

Tevatron を用いた Direct Observation of NU Tau (DONUT) 実験は ニュートリノからτが生成された 4 事象を報告し、τニュートリノの存在を実証しました。

"Observation of Tau Neutrino Interactions"

DONUT 実験はニュートリノと核子の反応によりτが生成される事象の探索を行いました。 Tevatron の 800 GeV 陽子ビームをタングステンターゲンとに衝突させ チャームメソン(Ds)を生成し、 その崩壊に含まれると期待されるτニュートリノを実験のソースとして用いました。 このτニュートリノを、ニュートリノを反応させるためのターゲットとしてのスチールと、 生成された荷電粒子を測定する原子核乾板のサンドウィッチ構造をしたターゲットに通します。 入射しているニュートリノのエネルギーから、生成されたτ粒子は崩壊するまでに 2mm 程度ほど飛ぶ事が期待されます。 またτニュートリノは 86 % の確率で 荷電粒子を一本だけ含んだ事象 (例えばμ + μニュートリノ + τニュートリノ)に崩壊します。 このような事象は、原子核乾板で飛行中に折れ曲がる線としてみる事が出来ます。

DONUT_Observation.png

上の図は DONUT 実験で観測された、τ粒子生成事象の候補です。右側の点でニュートリノが反応を起こし三本の荷電粒子を生成しました。うち、赤い点で示された点は途中で緑の線への折れ曲がりが見られます。この軌跡が、τ粒子と期待できます。 DONUT 実験は最終的にこのような 4つのτ事象候補を報告しました。

高エネルギー物理実験におけるニュートリノ

ニュートリノは弱い相互作用しかしないために、検出器で捉えるのは実際問題として不可能です。 実験ではこの性質を逆に利用する事で、ニュートリノが崩壊事象に含まれていた事、またその運動量を知る事が出来ます。 すなわち、観測にかかったすべての粒子の運動量とビーム衝突時の初期条件で決まる運動量保存則から計算される「足りない」運動量(欠損エネルギー、Missing energy などと呼ばれます)がニュートリノにより持ち去られた、と考えます。

レプトンコライダーであれば衝突粒子(例えば電子-陽電子)の3次元方向の運動量( Px=0, Py =0 , Pz はビームエネルギーで決まります)、 ハドロンコライダーではビーム軸に垂直な面の2次元方向の運動量 ( Px = 0, Py= 0 です)が分かっているので、 それぞれの場合でニュートリノの運動量が 3 次元方向、 2次元方向について逆算できます。


Last-modified: 2010-09-25 (土) 22:08:35 (2635d)