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ハドロンとは

解説

  強い相互作用をする粒子一般をハドロンと呼びます。クォークと反クォークの束縛状態からなるメソンと、三つのクォーク(ないしは反クォーク)からなるバリオンに分類されます。ハドロン粒子の例を分類とともに挙げてみましょう。原子核を構成する陽子、中性子は三つのクォークからなるバリオンに属し、パイ中間子、K中間子はメソンに属します。

特徴

  強い相互作用をすることができるため、物質中では、原子核と相互作用をします。その時、入射した粒子は減速され、そのエネルギーを使って、パイ中間子、K中間子、陽子、中性子等の軽いハドロン粒子が生成されます。このように雪崩的に、ハドロン粒子が生成される現象をハドロンシャワーと呼びます。素粒子物理学実験においては、ハドロンは物質中で原子核と相互作用してハドロンシャワーを起こしたことによって、ことによって同定することができます。また生成された粒子のエネルギーの総量を測定することで入射粒子のエネルギーを知ることもできます。このハドロン同定、およびエネルギー測定を行う実験装置はハドロンカロリメータと呼ばれます。LHC-ATLAS 実験にも用いられているテクニックです。ハドロンカロリメータによる測定は、生成される粒子の種類が多くまた多岐にわたるため、一般に難しくなります。そのため、エネルギー測定の分解能は、電磁シャワーを測定する電磁カロリメータに比べ悪いという特徴を持ちます。

素粒子標準理論におけるハドロン像

  現在の素粒子標準理論(量子色力学)において、複数のクォークとグルーオンの強い相互作用による束縛状態であると理解されています。強い相互作用中でのクォークグルーオンのふるまいは、その結合の強さゆえ、かなり複雑です。「クォークがグルーオンを輻射し、そのグルーオンがクォーク、反クォークに分裂し、再び対消滅しグルーオンになり、別のクォークに吸収される」という反応がハドロン粒子の中で絶え間なく起こっています。このような対生成されて、すぐに対消滅するクォークはシークォーク(海クォーク)と呼ばれます。ところで、先の説明でバリオンである陽子は三つのクォークからなるハドロンであるとを紹介しましたが、陽子の量子数(電荷が+1e, スピンが1/2(プランク定数を単位), etc)を決めるのは、二つのアップクォークと一つのダウンクォークであると理解されています。この様な安定な量子数を与えるクォークはシークォークと区別しバレンスクォーク(価クォーク)と呼ばれます。

  このようにハドロンは、バレンスクォーク、シークォーク、グルーオンが結合しあった複雑な束縛系であるといえます。、

メソンとバリオン (バリオン数の保存)

  現在ではバリオンとメソンはそれぞれ、バレンスクォークの数が異なることにより区別をすることができます。クォークという内部構造が理解される以前は、これらはバリオン数の異なる粒子種であると、「定義」されてきました。

  例えば、陽子は二つのパイ中間子に壊れることができません。陽子の質量は、パイ中間子の質量のおよそ 7 倍あり、エネルギー・運動量の保存を満たすことができる反応のはずです。そしてともに強い相互作用をすることができる。この反応が禁止されることを記述するために、時の物理学者はバリオン数という新しい量子数を導入し、これを保存則と考えることにしました。幾つかのハドロンはバリオン数 1/-1 をもち、いくつかの粒子はバリオン数 0 を持つと定義し、系全体では反応前後でバリオン数は保存するという法則を導入したのです。先の例では、陽子のバリオン数は 1 と定義され、パイ中間子のバリオン数は 0 と定義されます。故に、バリオン数保存を破る崩壊現象であり、起こりえない、となります。ここでいうバリオン数が 1/-1 の粒子はバリオンと分類され、0のものはメソンと分類されます。

  当初は実験結果を説明するために、無理やり導入したバリオン数の保存則も現在では、QCD(量子色力学)の理論体系によって、より深く、クォークのレベルで理解されています。QCDによれば、クォークが二つのクォークに分離したり、ふたつのクォークが一つのクォークに合体したり、という反応は禁止されます。これをあらわすのが、まさに先のバリオン数の保存則なのです。

  ちなみに、現在までバリオン数の破れを引き起こす反応は見つかっていません。クォークが二つのクォークに分離したり、ふたつのクォークが一つのクォークに合体したり、( 話を少し広げますが ) クォークがとある時点でレプトンに変わったりという反応は素粒子標準理論では禁止されており、その記述は正確に実験によって再現されています 。


Last-modified: 2010-06-04 (金) 03:56:11 (2749d)