名古屋大学N研ATLASグループ

粒子検出器とは?

衝突点で生まれたヒッグス粒子や超対称性粒子などの新粒子は、非常に不安定なため、すぐに比較的安定な粒子へと崩壊してしまうと考えられています。ここで言う安定な粒子には、上で述べられた6種類のクォークならびにレプトン、そして光子があります。ただし、クォークは単体では存在できないため、それらの複合体であるバリオン(陽子や中性子など、クォーク3つから構成される粒子)やメソン(パイ中間子やK中間子など、クォーク2つから構成される粒子)となって検出器に飛び込んで来ます(図1参照)。また、重いクォーク(トップ、ボトム、チャーム)や、重いレプトン(特にタウ粒子)も、すぐにより軽い粒子へと崩壊してしまいます。検出器は、軽く安定な粒子が残した特徴的な信号を検出し、粒子の種類とエネルギー、ならびに運動量を測定することで、親粒子の存在を確認します。ただし、ニュートリノは物質と相互作用をしないため、直接検出することが出来ません。1回の衝突全体で生まれた粒子群の、ビーム軸に垂直な成分のエネルギー(横エネルギー)を全て足し合わせると、エネルギー保存則から必ずゼロにならなければなりません。逆に、ゼロにならなければ、何か「見えない粒子」が逃げていったことの証拠になります。このようなエネルギーのことを「消失横エネルギー(missing ET)」と言います。この特徴を利用して、ニュートリノなど、物質と相互作用をしない粒子の検出を行います。特に超対称性粒子の探索では、LSP (Lightest Supersymmetric Particle) の候補であるニュートラリーノが大きなエネルギーを持って逃げてしまうと考えられているため、大きなmissing ETのある事象として検出されると期待されています。

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図1. 粒子検出の原理

ATLAS検出器は、図2に示すように、衝突点の周りを隙間なく囲む円筒形の構造をしており、新粒子の崩壊による粒子たちを逃さず捉える事が出来ます。直径25m、長さ40m、重さ7000トンの、世界最大の検出器です。計11種類の検出器を用いて、粒子の運動量とエネルギーを精密に測定し、新粒子の不変質量を再構成する事でその探索を行います。磁場の中では、電荷を帯びた粒子はローレンツ力を受けてその軌道が曲がります。運動量が小さいと良く曲がり、大きいとほとんど直線になります。この性質を利用して、粒子の運動量を測定します。未知の新粒子から来る粒子は、高い運動量を持つと考えられているため、そのような粒子を効率的に検出するための工夫が、いたるところになされています。(検出器の写真はこちら)

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図2. ATLAS検出器図3. 建設中のATLAS検出器 (2005年撮影)

ミュー粒子検出器

レプトンの1つであるミュー粒子は、電子の約200倍の質量を持ち、物質との電磁相互作用(制動放射)によるエネルギー損失が他の粒子に比べて小さく、寿命も比較的長い(静止系で約2.2マイクロ秒)ため、検出器の外側まで通り抜けて来ます。一方、その他の粒子は検出器を構成する物質でエネルギーの大部分を失い止まるように設計されています。つまり、検出器の最も外側に検出器を置けば、検出された粒子のほとんどはミュー粒子であるという事が言えます。図1のグレーの四角い部分が、ミュー粒子検出器に相当します。

ATLAS検出器では4種類の異なる検出器を用いて、ミュー粒子の検出ならびにその運動量の精密測定を行います。そのうち、エンドキャップ部分(円筒のフタにあたる円盤部分)に配置され、トリガー信号を作り出すのが、当研究室で研究を行っているThin Gap Chamber (TGC)と呼ばれる検出器です。トリガーとは、「いつ興味のある物理現象が起きたか」を判別する(引き金を引く)ためのしくみの事を言います。陽子と陽子が衝突すると非常にたくさんの粒子が生成されるのですが、その中から興味のある現象(イベント)とその他(バックグラウンド)を選別するのがトリガー検出器の役割です。砂場の中に埋もれてしまった宝石(新粒子)を探すための「篩い(ふるい)」に相当し、効率よく宝石を探すために必要不可欠な技術となっています。ATLASは3段階の篩いを用いて、未知の新粒子の探索を行うのですが、TGCは初段の選別を担当します。篩い分けを失敗すると、永久にその事象を使う事が出来なくため、実験の成否の鍵を握る、非常に重要な技術であります。

中央飛跡検出器

(ただいま執筆中、近日公開!)

カロリメータ

(ただいま執筆中、近日公開!)


Last-modified: 2010-05-01 (土) 02:51:46 (2784d)