J/ψとは

基本情報

質量3096.916±0.011 MeV
電荷0
スピン1
主な崩壊ハドロン (88%)、μμ, ee (それぞれ5.9%の崩壊分岐比)
発見年1974年
発見者ティン( J 粒子と命名), リヒター (ψ粒子と命名)
発見した実験Brookheaven National Laboratory (ティン), Stanford Linear Accelerator Center 電子等電子衝突型加速器 SPEAR (リヒター)

歴史

1974年、 ブルックヘブン研究所 BNL(Brokheven National Laboratorty)にて ティンのグループが pp-> ee + X (X は何でもよい)の反応現象を研究していたところ、 電子と陽電子の運動量から計算される不変質量が 3 GeV/c 近傍となる反応確率が増加することを発見しました。 これは質量 3GeV のee に崩壊する粒子の存在を示唆するもので、 J 粒子と命名しました。

同じ頃、スタンフォード加速器センターSLAC (Stanford Linear Accelerator Center)にて リヒターのグループが、重心系エネルギー 3GeV での衝突実験の際に、反応率が増加することを発見しました。 これも質量 3 GeV の粒子の存在を示唆するもので、彼らはψ粒子と命名しました。

現在では2グループの功績からJ/ψ粒子と呼んでいます。

講釈

崩壊幅の狭さ

一般的に、粒子の質量は正確に一定の値ではなく、広がりがあります。 これは検出器の測定精度からそのように見えているのではなく、 粒子自体が持つ性質によるものです。 この質量の広がりは、粒子の寿命と逆比例する量で、崩壊幅と呼ばれます。

J/ψ粒子はこの崩壊幅が非常に狭いという特徴があります。 具体的には 93.2±2.1keV であり、 質量 770MeV のρ中間子 の崩壊幅が 153 MeV であるのに比べると圧倒的な違いです。

この崩壊幅の狭さは、 (1)J/Ψが当時知られていた u,d,s クォークとは異なる、 第4のクォーク"c : チャーム"とその反粒子で構成されており (2)強い相互作用はチャームクォークの持つ量子数を保存する、とすると説明できます。 この条件で強い相互作用による J /ψ→πππの崩壊を考えてみると、 チャームクォークを消すためには同じ絶対値で符号の異なる量子数をもつ反チャームクォークと くっつけて消滅させることが必要になります。そして強い相互作用を担うグルーオンを 3 つも用いて πを作ることが必要になります。 荒く言って途中に現れる粒子の数が増えるほど反応がおこる確率は下がるので、 J/ψは崩壊しにくく、 そのために質量の幅は狭くなります。

レプトン対への崩壊

J/ψ 粒子はレプトン対 ee, μμ へ崩壊します。 この特徴とその崩壊幅の狭さのおかげで、 J/ψは実験の立ち上げ時期において特に重要な働きをします。

例えば、 ミュー粒子と同定することができた軌跡と別の軌跡との不変質量を計算した際に それが J/ψの質量 3.1GeV になれば、二本の軌跡は J/ψが崩壊してできた μμ の組み合わせだと期待できます。 そうすると二本目の軌跡は μ 粒子であると見なすことができ、 その軌跡に対する検出器応答や粒子識別能力を調べることができます。 このように一対のμμを生成する崩壊事象を利用し、 片方だけ素性を明らかにし(tagし)もう片方で検出器を調べる(probeに使う)手法は tag-and-probe (タグ・アンド・プローブ)と呼ばれる常套テクニックで、 Z->μμ と併せて、検出器の性能評価において重要な役割を果たします。


Last-modified: 2010-06-03 (木) 08:46:38 (2751d)