イベントディスプレイギャラリー

性質

質量80.398±0.025GeV
電荷1.602176 x 10 -19 クーロン (= 電子の電荷)
スピン1 (プランク定数を単位)
平均寿命3x10 -25 秒 (cτ=0.1フェムトメートル(fm, 1fm=10-15m))
相互作用弱い相互作用
主な崩壊W → l νl (30%) W → hadronic (70%)
発見年1983年
発見者カルロ・ルビア、シモン・ファンデルメール
発見した実験など欧州原子核研究機構(CERN) SppS

Wボソン

ワインバーグ
グラショウ
カルロ・ルビア

1968年、ワインバーグ(左)・グラショウ(中央)によってその存在が予言され、 1983年、ここCERNの陽子反陽子衝突実験でカルロ・ルビア(右)を代表とする実験グループによって華麗にその存在が実証された粒子、Wボソン。

このWボソンが2010年4月1日、ATLAS実験で再発見されました。
一昔前、素粒子物理学発展の立役者となったWボソン。世界中の素粒子屋が熱狂した時代です。 そんな粒子が、LHC実験始動の合図になろうとは、時代の移り変わりには驚きです。そして人類の向上力。大したものです。

W ボソンとは ?

Wボソンは陽子の80〜90倍の質量を持つ粒子*1で、弱い相互作用を伝播するスピン1のボソンです。 弱い相互作用というからにはいかにも弱そうですが、ところがどっこい。太陽から放射される莫大な熱エネルギーは、この弱い相互作用が引き起こすβ崩壊*2によって生じているのです。そのエネルギーたるやTNT火薬に換算して毎秒1000億トンの爆発に相当する強烈なエネルギーです。信じられますか?弱いと言っている割に、我々の生活にかかせない極めて重要な粒子なのです。

W ボソンの再発見 @ ATLAS

first W boson event http://atlas.web.cern.ch/Atlas/public/EVTDISPLAY/events.html
 left,around,first W boson event http://atlas.web.cern.ch/Atlas/public/EVTDISPLAY/events.html

上に挙げたイベントディスプレイを紐解いてみましょう。 まず予備知識。Wボソンはとても短寿命で生成されるや否や30%の割合でレプトン(電子、μ粒子、τ粒子)とその相方であるニュートリノに崩壊することが知られています。残りの60%はハドロンと呼ばれる粒子に崩壊してジェットと呼ばれる一連の粒子群を放出します。今日紹介するのは前者のイベントディスプレイです。

さて左の絵を見てください。
まず目に付くのが赤いラインです。これが、μ粒子の飛跡です。ではその相方のニュートリノはどこにいるかというと、 殆ど誰とも相互作用することなく検出器を突き抜けます。だから何も検出されません。 しかしエネルギーだけは持ちさって逃げるので、エネルギーのアンバランスさ(損失エネルギーと言います)を見れば 大体どの方向にニュートリノが飛んでいったかを把握することができます。 それが右側の検出器断面図の中に点線として書かれています。 その他のオレンジ色のラインは雑音信号だと思って下さい。

そしてそれぞれの粒子がどの程度のエネルギーを持っていたかが、 右上に書かれています。このイベントではμ粒子の横運動量(pT(μ+)と書いてある) が29GeV (GeVという単位については勉強してください)、検出位置(η(μ+)と書いてある)が0.66、 横方向の損失エネルギーの大きさが24GeVであることを示しています。そしてMTというのが μ粒子の横運動量とニュートリノの損失エネルギーとで不変質量を組んだ値を示しています*3

どうでしょうか?見方が分かりましたか? 右側のW→電子+ニュートリノのイベントディスプレイも同じように見てみてください。

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*1 質量80.4GeV:素粒子の仲間の中では3番目に重い
*2 4つの水素原子が融合してヘリウム原子1個になり、その際の質量欠損が莫大なエネルギーを放出する反応です
*3 ハドロンコライダーである LHC-ATLAS 実験では始状態におけるビーム軸方向の運動量がわからないために、終状態のニュートリノのビーム軸方向の運動量がわかりません。そのために質量を正確に測定する事ができないので、ここでみたように横運動量だけで質量を計算してみせています。

Last-modified: 2010-06-12 (土) 05:21:21 (2745d)