イベントディスプレイギャラリー

性質

質量91.1876±0.0021GeV
電荷0
スピン1 (プランク定数を単位)
平均寿命2.7x10 -25 秒 (cτ=0.1フェムトメートル(fm, 1fm=10-15m))
相互作用弱い相互作用
主な崩壊Z → l-l+ (10%) Z → νν (20%) Z → qq (70%)
発見年1983年
発見者カルロ・ルビア、シモン・ファンデルメール
発見した実験などCERN 陽子・反陽子衝突型加速器(SppS)

Z ボソンとは

Z ボソンは、Wボソンと共に電弱統一理論の立役者となった粒子で、 スピン1、弱い相互作用を仲介するゲージボソンと呼ばれる種類の粒子です。 Wボソンと違って電荷を持たず中性(電荷0)で、故にZボソンを仲介するような反応を 中性カレント反応とも、言います。

ニュートリノの世代数 "3" の謎に、大きな一歩

一見すると、だからなんじゃいという粒子ですが、 実は Z 粒子は、素粒子物理屋の中では重要な粒子であります。

1989-1995年、CERN研究所の LEP (Large Electron Positron) 加速器。 この時期、LEP加速器ではe+e- の重心系衝突エネルギーを91 GeVにチューニングしていました。 そう!Z粒子を大量に生成して、その性質を見よう、ということが行われたのです。

この LEP 実験には、ALEPH, DELPHI, L3そしてOPAL検出器という4つの検出器があります。 特に ALEPH 検出器は Z ボソンの共鳴を精密に測定するために建設されました(下図)*1

aleph.png

さて実験屋は、何をしたか?

実はこのALEPH 検出器の中心でe+e-を衝突させてZボソンを作り、 その Z ボソンがハドロン(qq) に崩壊したような事象をせっせと集めたのです。

そして横軸に衝突エネルギー、縦軸にZボソンがハドロンに崩壊した事象の数 (生成断面積、と言います)をプロットします。そしてそれらのデータ点を、 理論予想と比べました。

何をしたいのかというと、実は、この生成断面積がニュートリノの世代数によって 大きさが変化することを利用して*2、いまの我々の素粒子に対する理解のひとつ、 "素粒子の世代は3つ"という事実に挑戦を挑もうということをしたかったのです。

そして得られた結果は、3(右図。N=3のラインにデータ点が乗っているのがお分かりでしょう)。

generation.png

ニュートリノの数が4である可能性は 98%の信頼度で却下されました。驚愕の事実でした。 なぜ、3なのか?どうして3でなければならないのか?実はこの疑問に対する 答えはまだ出ていないのです。この記事を読んでくれている読者の方が、その理由を解明できるかもしれないのです。

ただしヒトツ注意ですが、この実験ではニュートリノの質量がZボソンの 半分以下であることを仮定しています。 従って、Zボソンの質量の半分以上の質量を持つニュートリノが存在すれならば、 世代の数は4になってもいいのです。

一流の科学者

私はこの実験を聞いた時、衝撃を受けました。 世代の数、3なんて証明しようがないではないか!と思っていたからです。 こういう実験を思いつく実験屋が、一流なのです。 巨大実験は個性が埋没しがちと言いますが、そしてそれはある程度には事実なのでしょうが、 しかし一方で、巨大実験を初めに考えた人、そういう実験をやろうと思いついた科学者は、まぎれも無く創造者です。創造することこそ、科学者の最大の楽しみでしょう?

そこに、身震いを覚える程の感動があるからです。その楽しみを常に追い求められる一部の科学者に、 科学は本当の楽しみを教えてくれるものだと、私は思います。

1984年、カルロ・ルビア、シモン・ファンデルメール、ノーベル物理学賞受賞。


Counter: 5716, today: 3, yesterday: 7

*1 内側から、半導体検出器、内部飛跡検出器、TPC(Time Projection Chamber)、電磁カロリメータ、超伝導コイル、ハドロンカロリメータ、ミューオンチェンバーを備えた、当時では最先端を行く検出器でした
*2 本当を言うと、フィッティング自体はZボソンの質量、崩壊幅、ピーク断面積の3つもパラメータに入っています

Last-modified: 2010-05-29 (土) 05:00:13 (2755d)