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tクォーク、トップ・クォーク

性質

質量171.2±2.1 GeV
電荷2/3 e (素電荷 (電子の電荷を単位))  
スピン1/2 (プランク定数を単位)
平均寿命-
相互作用重力、電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用
主な崩壊t → bW
発見年1995年
発見者FNAL Tevatron Collaboration
発見した実験などFNAL Tevatron 加速器実験

歴史

  3世代目のアップタイプクォークとして 1995 年に米国フェルミ国立研究所陽子-反陽子衝突実験である Tevatron 実験で発見されました。陽子の 170 倍の質量をもち、その他のクォークに比べて極めて大きな質量をもつという性質をもちます。3 世代目の bクォークが発見された後は、存在が確実視されていましたが、質量の大きさゆえに、発見は Tevatron 加速器 (重心系 2 TeV の衝突実験) の運転開始まで遅れることになりました。

  またトップクォークの質量は発見以前に正確に予言されていたことは特筆すべき点でしょう。トップクォークの質量が桁違いに大きいため、トップクォークは量子効果(高次のループ効果)として、さまざまな崩壊現象に影響を与えることが計算により予想されます。これを利用して、トップクォーク発見以前の LEP 実験における Zボソンの崩壊幅の精密測定結果等を用いて、トップクォークの質量は 160-200 GeV であることがすでに予言されていました。量子効果を利用して、未発見の物理事象を正確に予言することが可能であることを示したのです。

講釈、エピソード

  トップクォークはほぼ 100% の確率で、bクォークWボソンに崩壊します()。これは以下の二つの理由によります。

  • トップクォークの質量が大きく、弱い相互作用の崩壊幅が、強い相互作用(ハドロン相互作用)の崩壊幅に比べ大きくなり、強い相互作用を他の粒子とする前に、弱い相互作用で崩壊してしまう。
  • クォークの世代間の混合を記述する小林-益川行列によって、第三世代クォークであるtクォークが他の第二世代、第一世代に崩壊することは強く禁止される。

  これらの特徴を活かし、素粒子物理学実験においてはtクォークの同定を行います。bクォークに由来するハドロンジェット(bジェットと特に呼ばれる)と、Wボソンに由来する高運動量の崩壊粒子の信号がそのサインとなります。Wボソンに由来する崩壊粒子として、測定の精度が高いレプトン信号(電子ミュー粒子)がよく用いられ、LHC-ATLAS 実験においても用いられるテクニックです。(レプトンを用いたトップクォークの同定の例 奥村君の研究課題)

新しい物理現象のプローブとしてのトップクォーク

  トップクォークの重さゆえに、多くの新しい物理現象にも感度がある粒子として注目されています。以下に二つの例を挙げてみました。

ヒッグス粒子の結合定数の測定

  ヒッグス粒子は未発見ですが、素粒子標準理論によると重い粒子とより強く結合をすると考えられます。そのためヒッグス粒子の特性を調べる上で一番重い素粒子であるトップクォークは大きな役割を果たします。大きな結合定数を持ち、またハドロン化しないため QCD の不定性が入らないトップクォークはとてもよいヒッグス粒子を調べる上で、測定材料となります。

荷電ヒッグス粒子の探索

  十分質量が大きいため、Wボソンではなく、未発見の荷電ヒッグス粒子を放出して崩壊することも考えられ、荷電ヒッグスの証拠を見つけるための有力な手段としてトップクォークが用いられます。(タウレプトンを用いたトップクォークの生成断面積測定 高橋君の研究課題)


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Last-modified: 2010-06-02 (水) 08:10:56 (2752d)