質量の起源

 
素粒子の標準模型

現在の素粒子物理学の理解(標準模型)によると、物質を構成する基本構成粒子は、6種類のクォークと6種類レプトンであり、重力、電磁気力、弱い力、強い力の4種の力による相互作用が素粒子間に働くことで、この宇宙を形成しているとしています。この標準模型はこれまで実験的に観測された様々な素粒子現象を非常によく予言する能力を持っています。しかしながら、6種のクォーク、6種のレプトンがなぜ独自の質量を持つのか、同じクォークであるにも関わらず、最も軽いアップクォークと最も重いトップクォークとの間には100,000倍もの質量差 (物質の基本粒子と呼ばれるクォーク同士に、ハエと象くらいの重さの違いがある!) があるのか、そもそも、素粒子は質量をどうやって獲得するのか、そんな当たり前そうに思えることが、素粒子の世界では解っていないのです。


質量とは?

素粒子の動きにくさを表してい
ます。質量がゼロの素粒子は光の速度で移動しつづけます。そして、止まることができません。一方、有限の質量を持つ素粒子は、光よりも遅い速度でしか運動できません。1960年代に作り上げられた理論による理解では、宇宙はヒッグス粒子で満たされており、そのヒッグス粒子の海の中を素粒子が運動することで生じる抵抗力が質量となって現れてるとしています。重たい粒子は、ヒッグス粒子との抵抗力が大きいので質量が重く、光はヒッグス粒子の抵抗を感じないので、質量が0であると考えます。ヒッグス粒子が質量起源の謎の鍵となる粒子なのです。


ヒッグス粒子はどこに?

ヒッグス粒子は実験的に未発
見です。スイス・ジュネーブ近郊にある周長27kmの巨大加速器LHC(Large Hadron Collider)は、光速の99.999999%にまで加速した陽子と陽子を衝突させることでビッグバン直後の初期宇宙世界を作り出すことができます。我々は、この加速器で作り出されたヒッグス粒子を検出器で捕らえようと試みています。2011年12月13日にヒッグス粒子の探索に関する現状報告を行いました。これまでの実験と2012年に取られるデータによって、いよいよ、その発見が近づいていると期待されています。