名古屋大学N研 LHC-ATLAS実験グループのホームページ

  名古屋大学 LHC-ATLAS実験グループは、スイスのCERNにある世界最高エネルギー加速器素粒子実験LHC-ATLASにて、新しい素粒子と、素粒子現象の発見を目指した研究を進めているN研究室のサブグループです。2009年から収集を開始した物理データを使い、物理解析から検出器性能評価にいたるまで幅広い研究を展開しています。

What's new

2010年4月21日:2010年6月19日(土)に「巨大加速器で探る宇宙の始まり」が開催されます。

2010年3月6日に名古屋大学野依記念学術交流館にて開催した「LHC実験はじまる」の好評を受け、今度は、6月19日(土) に大阪市立科学館プラネタリウムホールにて、「巨大加速器で探る宇宙の始まり 〜テラスケールの地平を切り拓くLHC〜」を開催します。LHC-ATLAS実験で活躍する大阪大学、神戸大学、名古屋大学の研究者が協力し、一般の方々(目安として高校生以上)に最先端の素粒子実験に関してわかりやすく解説します。名古屋大学からは、当日CERNの実験現場に常駐している戸本准教授が実況生中継をする予定です。

 

2010年3月30日:世界際高エネルギー7TeV での実験開始!

ATLASで捉えたWボゾン事象の候補

2010年3月30日、実験開始予告通りに、LHC 加速器は世界最高となる重心系エネルギー7 TeVでのビーム衝突に成功しました。CERNからプレスリリースが発表されています。また、ATLASホームページには、イベントの様子がご覧いただけます。特に"Animation"は、検出器の事がよくわからなくても衝突のイメージが分かりやすく楽しめるとおもいます。

過去のニュース一覧>

このページの目次

グループ構成メンバー

ATLASグループメンバー (ATLAS Control Building にて)
ATLASグループメンバー (名古屋大学にて)

LHC-ATLAS実験が目指す物理

  LHC-ATLAS実験は、スイス・ジュネーブ近郊のCERNにて、2009年から本格始動した大型加速器を用いた素粒子実験です。周長27キロメートルにも及ぶ巨大LHC加速器は、7兆電子ボルト(7テラ電子ボルト=7TeV、1電子ボルトは電子を1ボルトの電場で加速したときのエネルギー)にまで加速した陽子を衝突させ、宇宙誕生後わずか10-12秒足らずの世界を人工的に作り出します。そして、ATLAS実験で物質の構成要素である素粒子の世界と、その素粒子達が支配していた宇宙初期の世界をとことん追求します。人類の永遠の課題である、重力、電磁気力、強い力、弱い力の4種の力の統一への扉を開こうと、ヒッグス粒子、超対称性粒子、ミニブラックホールなどの新しい素粒子、素粒子現象の発見を目指し、さらには、暗黒物質の正体を暴こうとしています。

CERN
LHC加速器

  素粒子物理学は、万物の基本構成要素を追求し、その基本構成要素がどういう運動力学に従って、我々の世界、あるいは、宇宙を作り上げているのか?を探求する学問です。人類は、古くはギリシャ時代の四元素説に代表される哲学として、そして、学問、基礎科学として、その時代の素粒子を、分子、原子、原子核、、、、と理解を深めてきました。

標準模型の素粒子達

  現在、人類は、素粒子として、6種類のクォークと6種類のレプトンの物質構成粒子と、それらの素粒子の間に力を媒介するゲージ粒子を考えています。素粒子の間には、電磁気力、弱い力、強い力、重力の4種の力が働きます。そして、電磁気力を伝えるゲージ粒子が光子、同様に、弱い力を伝えるWボゾンとZボゾン、強い力を伝えるグルーオン、重力を伝えるグラビトンとなります。現在まで人類が実験的に測定した素粒子の大きさは10-18m(=10-16cm、1億分の1センチメートルのさらに1億分の1、つまりむちゃくちゃ小さいです)。これらは、大型加速器によって素粒子同士を衝突させ、100GeV(1000億電子ボルト、1電子ボルトは電子を1ボルトの電場で加速したときのエネルギー)のエネルギー世界を作り出す加速器実験によって達成されました。この極微で高エネルギーな世界は、宇宙がビッグバンによって誕生した後、わずか10-12秒の世界です。こうした現在の素粒子理解を記述する理論を「標準模型」と呼んでいます。標準模型は、1970年代に理論体系は完成し、これまでのほぼ全ての実験による測定結果を予言する能力を持つ完成された理論なのです。

  この標準模型では、上であげた4種の力のうち電磁気力と弱い力の統一(電弱統一)が達成されています。宇宙創成時では、2つの力は元々同じで区別がなく良い対称性が達成されていたのですが、宇宙が広がり冷える過程の中で、相転移(温度が下がって水が氷へと転移するように、ある温度で突然、現象の激変が起こるさま)がおき、対称性が自発的に破れて2つの力に分岐したと、研究者は考えています。この電弱統一では、素粒子が質量を獲得するためにヒッグス粒子が不可欠となります。いわば、ヒッグス粒子は、「標準模型」の核となる粒子なのです。しかしながら、これまで実験的な発見には至っておらず、LHC-ATLAS実験がこれを最初に発見できる実験であると期待されています。

  さらに、素粒子研究者達は、標準模型が記述する100GeV世界よりも高エネルギーな、言い換えると、ビッグバン直後の宇宙初期時代には、電弱強統一、あるいは、電弱強重統一がなされていたと信じています。テラスケール(1TeVのエネルギー世界)という高エネルギー世界における物理の発見こそが、人類永遠の夢である電弱強(重)統一への扉を開くと信じています。そして、テラスケールの世界で、超対称性や余剰次元などの新しい物理が発見されると、電弱強統一が現実的になる可能性があります。LHC-ATLAS実験は7TeVの陽子と7TeVの陽子の衝突によって、宇宙初期時代を作り、テラスケールにおける新しい素粒子の発見を目指します。

  以上のように、20世紀に誕生、完成した「標準模型」を超える、新たな素粒子像を構築することを目標に、我々はLHC-ATLAS実験における研究に没頭し、楽しんでいます。そこでは、ヒッグス粒子、超対称性粒子、ミニブラックホールなどの発見が期待でき、暗黒物質の正体をも暴けます。2009年から実験は本格的に始動し、現在、順調にデータを蓄積し続けています。名古屋大学グループは、実験立ち上げの検出器建設、運転時期からATLASグループ内で存在感を示し、そして今、実験初期の物理データにより、最も重い素粒子であるトップ・クォーク物理の研究を進めています。そして、物理データの増加に伴い、ヒッグス粒子、超対称性粒子物理へと研究を発展させていこうと考えています。

名古屋大学グループの研究活動

名古屋大学アトラス実験チームは、世界最高エネルギーの実験場で素粒子標準模型の精密な理解、 素粒子標準模型を超える物理の発見 を目指しています。

データ解析では、物理過程解析 、検出器動作解析の両面からのアプローチをかけ、検出器実機の理解を進めるとともに、スピーディな物理成果の発信を目指します。

  • トップクォーク対生成断面積の測定 (奥村、高橋)
  • ミュー粒子検出器の動作解析 (長谷川)

検出器のオペレーションでは、建設・試運転時よりミュー粒子トリガー検出器に中心的となって貢献をしており、32万チャンネルを有する大システムを制御し、安定にデータを収集する基盤を構築してきました。

  • ミュー粒子トリガー検出器制御システムの開発 (杉本)

以下のリンク先で、それぞれの研究の詳細がご覧いただけます。

奥村恭幸 (博士課程 3 年) 「LHC-ATLAS実験におけるトップクォーク対生成断面積の測定」

LHC-ATLAS 実験のスタートアップにおいて重要な測定量であるトップクォーク対生成量を、トップクォーク対がミュー粒子に崩壊するチャンネルに着目し、高精度での測定を目指します。

高橋悠太 (博士課程 3 年) 「LHC-ATLAS実験におけるトップクォーク対生成断面積の測定」

荷電ヒグス粒子に対し高感度なチャンネルであるタウ粒子を含むトップクォークの崩壊事象に注目し、トップクォーク対生成数を測定します。


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Last-modified: 2010-04-27 (火) 22:20:50 (5135d)