J-PARC 原子核素粒子実験施設において物理採択された実験E16のためのGEM電子検出器
開発を行った。同実験では、原子核中での中間子質量の系統的測定により、有限密度におけ
るカイラル対称性の回復について確証を得ることを目的としている。同実験についてGEM電子
検出器開発状況をふくめ11回(うち招待7件) の学会発表を行った。
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GEM電子検出器は、前段:GEMトラッカー部、中段:HBD(ハドロンブラインド:GEMをもちいたガス
チェレンコフ検出器)部、後段:鉛ガラスカロリメータ部の三段構成であり、前段/中段がガス
電子増幅フォイル(GEM)を用いている。本年度は2度にわたり、東北大核理研において試作機
のビームテストを行って基本性能を確認し、またGEMフォイルの改良を行った。
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GEMトラッカー部は、チェンバーへの垂直入射ビームについては要求性能をみたす位置分解能
100ミクロンを達成した。一方、分解能の入射角度依存性を抑えるため、読み出しストリップ
間隔、電離ギャップ間隔等パラメータの最適化に着手し、なお継続中である。
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HBD部に関しては、GEMへのCsI光電面蒸着を浜松ホトニクスに依頼して行っている。試作機(図1)
により、CF4ガスを発光体(長さ50cm)かつ増幅ガスとして用いて、trackあたりおよそ6光電子
相当のチェレンコフ光の検出を確認した(図2)。目標値は20光電子相当であり、今後、ガス
不純物の除去および理研でのCsI蒸着により目標達成を目指す。
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GEMの穴径の調整試作によって、従来より安定性の高いカプトン製GEM(50ミクロン厚)の製作に
成功し、国内の他のグループでも使用される見込みである。一方、安定かつ高ゲインと低価格
の両立をめざして、通常は高価なレーザーエッチング法で製作されるLCP製GEM
(100ミクロン厚)の、ウェットエッチング法による試作を行ったが、技術的困難があり、
この方式による量産は断念した。
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