文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究:多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究

計画研究A01・平成22年度の研究の進捗と成果


(図1)Υ(5S)崩壊過程におけるπ+π-質量欠損スペクトル。質量9.898 GeV/c2のhb(1P)粒子、質量10.259 GeV/c2のhb(2P)粒子を発見した。
(図2)B+→X(3872)(→J/Ψγ)K+(左上)、B0→X(3872)(→J/Ψγ)KS(右上)崩壊におけるJ/Ψγの質量分布。点はデータ、赤点線はフィットによって得られた信号の分布、青線は信号とバックグラウンドを含めた全体の分布を示す。 B+→X(3872)(→Ψ'γ)K+(左下)、B0→X(3872)(→Ψ'γ)K0(右下)崩壊におけるΨ'γの質量分布。点はデータ、赤点線はフィットによって得られた信号の分布を示す。

本研究では世界最高輝度を誇る高エネルギー加速器研究機構(略称KEK)の電子・陽電子衝突型加速器におけるBファクトリー実験(Belle実験)で蓄積された高統計データを解析し、新たなエキゾチックハドロンの探索とその性質の体系的な解明を中心とした新しい観点でのハドロン物理解析を展開する。

Belle実験はこれまでに、エキゾチックメソン(テトラクォーク)の候補X(3872)を世界で初めて発見し、Bファクトリーのデータによるハドロン物理の新しい領域を拓いた。さらに、B中間子崩壊のみならず電子・陽電子衝突過程など様々な生成反応でエキゾチックハドロンの候補を発見し、確定的な証拠となる電荷を持つZ(4430)+の発見するなど、世界をリードしてきた。

本年度は、拠点の一つである奈良女子大学に昨年度導入した専用のデータ解析用計算サーバーをさらに有効に活用するため、ディスクアレイシステムを増強した。もう一方の拠点のKEKでは研究員を雇用することにより解析の促進に努めた。

本年度は、解析ではB中間子の崩壊においてX(3872)に関する輻射崩壊モードを研究し、X(3872)→J/ΨγおよびX(3872)→Ψ'γ崩壊モードを確立し崩壊分岐比を測定し、国際会議で結果を発表した。また、Υ(1S)粒子のX(3872)への輻射崩壊の探索を行い、崩壊分岐比の上限値を得た。さらに、二光子生成によるη粒子対や電子・陽電子衝突によるDs(*)粒子対の終状態のハドロン系の研究結果を論文に発表した。2月にはΥ(5S)→hbπ+π-崩壊過程でhb粒子を発見し、国際会議で発表した。


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