文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究:多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究

新ハドロン サマースクール

新学術領域研究「多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究」 (略称:新ハドロン)では大学院生等の若手(と自負する)研究者を対象に、 ハドロン物理をテーマにしたサマースクールを開催します。実践をとりこみ、 研究現場の一端を学べることを目指しています。多くの方の参加をお待ちしています。

サマースクール企画、計画研究E0(理論班)阪大RCNP 保坂 淳

第1回 新ハドロン サマースクール ― 基礎から実践まで ―

  • 日時:8月18日(水)−20日(金)3日間
  • 場所:大阪大学吹田キャンパス / JICA
  • 講義/実践演習テーマ:
    1. クォーク模型によるマルチクォークハドロンの計算
      ─ バリオン、メソン、マルチクォーク状態 ─
      担当: 竹内幸子(社会事業大)、滝沢誠(昭和薬科大学)、安井繁宏(KEK)
    2. 高エネルギーハドロン物理学入門
      担当: 川村浩之(KEK)
    3. ホログラフィック・ゲージ理論入門
      ─ 超弦理論がつなぐ高次元重力とハドロン物理 ─
      担当: 中村真(京大理)
    その他若手によるセミナー講演をいくつか予定しています。 スクール参加者は、上記3テーマのうち一つに配属されます。
    なお、来年度は 「ハドロン反応で探る共鳴状態」(担当:保坂淳)、 「線形シグマ模型を用いたππ散乱振幅の解析」 (担当:原田正康)、 「格子QCD理論〜強い相互作用の第一原理計算」(担当:菅沼秀夫)の予定です。
  • 参加申込:
    参加希望者は以下のエクセルまたはcsvを添えてE-mailで 7月25日(日)までに
    安井繁広 shigehiro.yasui_@_kek.jp(_@_を@に変えてください)
    宛に申し込みください。メールのタイトルを 「サマースクールの参加申し込み」として下さい。
  • 講義/実践演習テーマの説明:
    1. クォーク模型によるマルチクォークハドロンの計算
      ─ バリオン、メソン、マルチクォーク状態 ─
      担当: 竹内幸子(社会事業大)、滝沢誠(昭和薬科大学)、安井繁宏(KEK)

      近年、Belleによって相次いで発見された、Ds、X(3872)、Z+(4430)メソン、 また、LEPSのΘ+バリオンなど、単純なクォーク模型では説明できないハドロンに 注目が集まっている。通常のバリオン(qqq)やメソン(q-qbar)に更に q-qbar対が付いたマルチクォーク状態であると仮定すると、上記ハドロンや、 より軽いスカラーメソンの性質が理解できるとの主張もされている。 本コースでは、低エネルギー領域での有効理論としてクォーク模型の概要と、 マルチクォークハドロンが存在するメカニズム、結合状態、および、 complex scaling method による散乱状態の解法等についての講義をうけた後、 実際に、q-qbarメソン、qqqバリオン、簡単化した qqbar-qqbarのメソン、 qqq-qqbarのバリオンについての数値計算を行う。
    2. 高エネルギーハドロン物理学入門
      担当: 川村浩之(KEK)

      クォーク・グルーオンの相互作用を記述するQCDは短距離で漸近的自由性、 長距離ではカラー閉じ込めという著しい性質を持つ。ハードプロセスと 呼ばれる大きな運動量移行をともなうハドロンの散乱過程は、摂動的に 取り扱える短距離部分と非摂動関数であらわされる長距離部分の積として 記述される(QCD因子化)。前者がプロセス毎に計算が可能なのに対し、 後者はプロセスによらないユニバーサルな量としてハドロンがどのように クォーク・グルーオンにより形成されているかの情報を担う。本コースでは QCDの繰り込み、繰り込み群方程式から始めてQCD因子化などの摂動論的QCD の枠組み、深非弾性散乱への応用などについて講義・演習を行う。特にパートン 模型の描像が場の理論からどのように現れるかやパートン分布関数・破砕関数の スケール依存性などついて解説し、簡単な演習を行う。 
    3. ホログラフィック・ゲージ理論入門
      ─ 超弦理論がつなぐ高次元重力とハドロン物理 ─
      担当: 中村真(京大理)

      QCDの基礎方程式は単純であるにもかかわらず、QCDの織りなす現象は複雑多様で あって、今なお完全には理解されていない。QCDの解析手法にはいずれも何らか の長所と短所が共存しているため、そのより深い理解に到達するためには多くの 異なる理論手法・視点を開発し、相補的に研究を進めていくことが重要である。 そのような幾つかの理論手法の一つとして最近注目されているのが、特定の強結 合ゲージ理論を高次元重力理論で書き換えるゲージ・重力対応である。この講義 の導入では、ゲージ・重力対応は決してブラックボックスではなく、非常に自然 な論理の帰結であることを示す。さらに幾つかの具体的計算例を示しながら、 ゲージ・重力対応における基本的計算手法を示してゆく。この講義では、ゲー ジ・重力対応の可能性と限界を正しく認識し、QCDの他の解析手法との相補関係 を正しく整理して、着実かつ新進気鋭な研究を行うためのスタートラインに立つ ことを目標とする。
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