研究内容と成果
- タウ・レプトン物理部門の研究

- LHC物理部門の研究

Research Highlight

2010年3月
2009年度の成果(タウレプトンからレプトンフレーバーを破る崩壊の探索)

  ニュートリノ振動の発見により、レプトンフレーバー(電子数、ミュー数、タウ数)は破れていることが分かっています。 しかし、荷電レプトンからのレプトンフレーバーを破る崩壊は、まだ観測されておらず、 その分岐比は、ニュートリノ振動だけが寄与するとすると、現在の実験では観測できないほど、小さいと考えられています。 しかし、標準模型を超える新しい物理が存在すれば、 その分岐比は現在の実験において観測可能な大きさを持つ事ができると予言されています。 よって、荷電レプトンにおけるレプトンフレーバーを破る事象の探索を行うことは、 新しい物理の探索において重要であり、その観測が期待されております。

 私たちはBelle実験で得られた世界一の高統計のタウレプトン対のデータを用いて、 様々なレプトンフレーバーを破るτレプトンの崩壊の探索を行っております。 残念ながら、まだ信号は観測されておりませんが、まもまく上限値は10-9に入るところまできています。 その探索感度は世界最高レベルに入って、その観測が期待されております。


2009年11月23日 : LHC-ATLAS 実験・重心系エネルギー900GeVでのビーム衝突に成功!![LHC物理部門より]

ビームコミッショニング再開からわずか3日目の今日 、ATLAS 実験ホールにて450GeV 同士の陽子ビームの衝突に成功しました。 ATLAS 公式ウェブページ(英語) にてイベントディスプレイがご覧いただける他、 CERN プレスリリース ではATLASスポークスパーソンやCERN所長のコメントが取り上げられています。 今後はビームのエネルギー・強度を上げてゆき、 クリスマスまでに両ビーム 1.2TeVでの衝突を目指します。
いよいよ実験が本格稼働を始め 一時たりとも気を抜く事ができません。 今後も現場最前線から研究成果を紹介できるよう頑張っていきます!

2009年11月20日 : LHC 運転再開・ATLAS検出器でのビーム由来粒子の検出に成功![LHC物理部門より]


メンテナンスを進めてきたLHC加速器が遂に運転を再開し、ATLAS 検出器でも ビームの二次・三次粒子粒子の検出に成功しました。 コントロールルームにはビーム到着を待ち望んでいた研究者たちが詰めかけ その瞬間を固唾をのんで見守り、 イベントディスプレイにビームイベントが表示されると 歓喜の声がわき起こりました。
当日のコントロールルームの様子やイベントディスプレイは ATLAS 公式ウェブページ(英語) でご覧いただけます。
今回のビームデータにより これまで進めて検出器のハード・ソフト両面からの構築、 また宇宙線を使っての検出器コミッショニングが正しく進められてきた事が確認できました。 しかしまだまだ気を抜く事はできません。 現場の緊張した空気の中、 2週間後に予定してる900GeVでの衝突、さらにそれに続く 高エネルギーでの実験開始に向け研究を進めています。

2009年11月予定のLHC加速器開始に向けて[LHC物理部門より]

昨年9月の陽子ビーム周回に成功後1週間後の9月23日、LHC加速器のトンネル内で事故が発生しました。 加速器の2つの超伝導磁石間の電気的接続部で電気抵抗が増加し発熱し放電したことが引き金となり、その結果、 超伝導磁石を摂氏マイナス271度にまで冷却するのに必要な液体ヘリウムが真空容器に漏れ出し気化し圧力が急上昇しました。 これまでに、53台の磁石を地上に取り出し修理を行い、さらに、同様の事故を他でも起さないよう、様々な 検出装置を設置するなどの改善を行っています。そして、11月からLHC加速器の運転再開し、年内にでも 3.5TeV+3.5TeVの陽子・陽子衝突を実施する予定です。実現すれば、世界最高エネルギーとなり、新しい素粒子開拓 への第一歩をふみだすことになります。その後、エネルギーを増加していき、2010年末にLHC加速器を止め、 設計値である7TeV+7TeV衝突エネルギーに向けたを作業を開始する予定です。 LHC加速器の正式なスタートアップスケジュール

私達は、この期間を有効に利用し、宇宙線を用いてμ粒子検出器の最終的な仕上を行っています。 検出器は非常に良い状態にまで仕上がってきており、研究員の杉本拓也君や博士後期課程の長谷川慧君を中心に大型検出器の周りを 縦横無尽に走りまわりながら最終的なハード調整を実施しています。 さらに、検出器の性能で最も重要な検出効率が設計目標値に届いていることなどをデータで立証するなどの活躍をしています。 そして、こうした実績を世に発信するべく、N研究室の博士後期課程学生である高橋悠太君が10月5日から9日に行われた ICATPP(International Conferenceon Advanced Technology and Particle Physics )国際会議でその研究成果を発表するなど、非常に活発な研究活動を展開している真最中です。高橋君の発表の様子はこちらでご覧いただけます(注意:容量の大きなファイルです)。

さらに、私たち名古屋大学チームでは、博士後期課程学生である奥村恭幸君を中心にトップクォーク物理などの物理解析を開始しはじめ、 ビーム衝突に向けた研究をも視野に入れはじめています。今は、シミュレーション解析が主ですが、世界最高エネルギー衝突が起ったら どんどん物理解析も進めていきます。

名古屋大学 タウ・レプトン物理研究センター

Nagoya University Tau-Lepton Physics Research Center

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