ABOUT B-BRAVE

本国際先導研究では、日本がホストしてKEKで進行中のスーパーBファクトリー(SuperKEKB/Belle II) 国際共同加速器実験を舞台として、国内外の実験物理-加速器物理-理論物理の研究グループ間の強固な連携により、既に世界最高である同実験の衝突性能と物理探索能力を究極的に高め、標準理論を超える物理の発見を目指します。コロナ禍で停滞した日本と海外研究機関、そして国内研究機関の間での研究交流や人材還流を強化し、日本のKEKでの実験遂行と、地球規模で展開されるデータ解析や物理研究を力強く進めるポストコロナ時代の研究体制を構築します。その中で、日本の若手研究者と大学院生が、研究グループや海を飛び越えて海外研究者とともに、プロジェクトの成功に向けて必要となるSuperKEKB加速器とBelle II検出器の性能改良を主導し、大統計のB中間子やタウレプトンの崩壊測定結果からの物理のアウトカム導出を進めます。これにより素粒子物理学の最先端を切り拓くとともに、将来の国際共同加速器プロジェクトをリードする人材を育成します。

本国際先導研究を“B-BRAVE:SuperKEKB-Belle II Research And cultiVation of young Explorers”という呼称で呼んで、参画する国内外の研究者が連携協力して研究を進めています。

研究の目的と意義

世界最先端の加速器実験で「消えた反物質の謎」の解明に迫る

物質を構成する基本粒子には電荷を逆転させた反粒子(例えば電子に対しては陽電子)が存在し、138億年前の宇宙誕生時には、ビッグバンの莫大なエネルギーから粒子と反粒子が同数作られたはずです。ところが、現在の宇宙は物質(粒子)で構成されており、反物質(反粒子)は見当たりません。どのようにして反物質は消えたか? 我々は、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)でスーパーBファクトトリー(SuperKEKB/Belle II)実験を進め、この「消えた反物質の謎」の解明を目指す研究を進めています。

この研究の先駆けとして、私たちは、KEKのBファクトリー実験(1999年開始)において、B中間子と呼ばれる粒子と反B中間子の崩壊の違い(CP対称性の破れ)を発見しました(2001年)。そして、その違いが素粒子標準理論に組み込まれている小林-益川理論の予言どおりであることを検証し、これが両氏の2008年ノーベル物理学賞受賞につながっています。しかしながら、見つかった対称性の破れは小さすぎて消えた反物質の謎を説明できていません。この説明には標準理論を超えてさらに初期の宇宙を描ける新しい物理理論が必要と考えられます。

現在私たちは、実験装置の性能を大幅に増強したスーパーBファクトリー実験を進め、標準理論を超える新しい物理の探究を進めているます(2019年に本格的に始動)。この実験で用いるSuperKEKB加速器では、「ナノビーム衝突」と呼ばれる極小サイズの電子ビームと陽電子ビームを衝突させる画期的な衝突方式により、世界最高の衝突性能(ルミノシティ)を更新中です。そして、衝突点に設置されたBelle II実験では、今後約10年間に先行実験の50倍に達する大量のB中間子やタウレプトンの崩壊データを収集し、標準理論からのズレや標準理論では起こらない現象の観測による新物理の証拠の発見を目指しています。

本研究では、この目標を達成するために、国内外の実験-加速器-理論研究者の協力により、同実験の衝突性能を究極的に高めるとともに詳細なデータ解析と理論的な考察を進めてゆきます。そして、新物理の証拠を発見するとともに、それがどのような新しい物理理論で説明できるかを探ってゆきます。こうした研究により、これまでよくわかっていなかった初期の宇宙の姿を明らかにし消えた反物質の謎の解明に迫りたいと考えています。

SuperKEKB加速器、Belle II実験、理論研究の連携により新物理の発見を目指すBファクトリー研究の概要

研究体制

日本がホストする世界有数の加速器国際共同実験

SuperKEKB/Belle II実験は、世界中の27の国・地域から1100名を超える研究者が集結する世界有数の加速器国際共同研究であり、加速器の運転は日本のKEKが責任をもって行い、Belle II実験の推進(建設、運転、データ解析)は、参加国がサブ検出器や資金、計算機資源を持ち寄って進んでいます。そして、本研究代表者の飯嶋徹(Belle IIスポークスパーソン)をはじめとする日本の研究者がプロジェクトマネージャー、サブ検出器やデータ解析のグループリーダーを務めるなど日本が先導する国際共同研究です。

本研究で海外研究拠点との双方向の研究交流を強化

実験は日本で行っていますが、Belle II 実験の各サブ検出器の開発やデータの解析は全世界的に進んでいます。今後さらに衝突性能を高め、実験結果から新しい理論を引き出すには、世界中の加速器、理論研究者との協力も重要です。そのために、本研究で日本から海外に向かう流れを作り出し、海外の研究拠点との双方向の研究交流を強化します。本研究には、研究代表者と分担者9名、研究協力者として若手研究者・大学院生各10数名が参画します。海外からは、フランスのIJCLab、ドイツのDESY、スイスのCERNをはじめとする海外研究機関の研究者、さらに国内研究機関の研究者が協力して最先端の研究とともに人材育成を進めています。

日本を中心に欧州、アジア、アメリカの研究者が参加するBelle II国際共同実験の研究体制