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研究内容

ミューオン g-2/EDM 精密測定実験

現在の素粒子標準理論は素粒子実験の結果の多くを正確に予言しています。 しかし、ニュートリノ質量起源やダークマターの存在など、標準理論では説明できない現象もまた報告されており、新物理の解明が急務となっています。

第二世代のレプトンであるミューオンの異常磁気能率(g-2)も標準理論から高い精度で予測ができる物理量の一つです。 しかし、先行実験によって測定された値と標準理論からの予想値にはずれが観測されており、新物理による影響が期待されています。 茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCではミューオンg-2/EDM精密測定実験の準備が進行中です。 この実験ではg-2を1000万分の1の精度で測定し、超精密測定のフロンティアから新物理の探索を行います。 また、同様にミューオンの電気双極子能率(EDM)も精密測定します。 この実験の到達感度においてEDMが観測されれば、レプトンセクターにおけるCP対称性の破れを示し、新物理の手掛かりとなります。

これらの双極子能率は磁場中でのミューオンのスピンの動き(歳差運動)から測定することができます。 この実験では、J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)で毎秒約1億個生成される大強度の表面ミューオンを利用します。一度常温レベルまで冷却したのちに再加速することで運動量のそろった、指向性の高いミューオンビームを作り出します。 このビームは、医療用MRIを応用した高精度で一様な3テスラ磁場の中に入射・蓄積されます。 ミューオンはやがて陽電子とニュートリノに崩壊し、陽電子は磁場中に設置したシリコンストリップ検出器によってその飛跡が検出されます。 陽電子はミューオンのスピンの向きに出やすいため、検出された陽電子の時間変化を測定することでミューオンのg-2とEDMの測定することができます。 指向性の高いミューオンビームの生成や3テスラの高精度磁場での蓄積、飛跡検出器による陽電子の測定など、先行実験とは全く異なる手法を用いた実験となります。 N研では、表面ミューオンの冷却のためのミューオニウム生成標的であるシリカエアロゲルの研究開発や、再加速のための線形加速器で用いられるビームモニターの開発に参加し、精密測定実験の実現に向けて貢献をしています。

左図:J-PARCミューオン g-2/EDM 精密測定実験のコンセプチュアルデザイン。右図:2019年11月にJ-PARC MLFで行った加速ミューオンのビームテスト時に撮影した一枚。

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