N研博士後期課程 川口智美さんが2020年のATLAS Outstanding Achievement Awardを受賞しました。
ATLAS Outstanding Achievement Awardは、ATLAS実験での安定したデータ取得に不可欠な検出器運転、検出器アップグレード、ソフトウェア開発、コンピューティングといった技術に対して、極めて優れた貢献をした研究者に贈られる賞です。今回は、ATLAS実験を構成する約3000名の研究者の中から8組の開発グループに贈られ、そのうち川口さんが参加している開発グループが「初段エンドキャップ部μ粒子トリガーのレート低減」を理由に同賞を受賞しました。
ATLAS実験では、生成される膨大な物理事象の中から興味のある物理事象をデータ収集時に高速選別するシステム (トリガー)が大変重要です。初段エンドキャップ部µ粒子トリガーでは、磁場領域外側にあるμ粒子検出器(TGC)を用いてトリガー判定を行います。予め用意したTGCのヒット情報に対応する運動量のテーブル (Lookup Table)を実際のTGCヒット情報と照らし合わせることで運動量を即座に導出し、物理事象を選別しています。
運転期間中のさらなる高統計データ取得を目的として、加速器での単位時間当たりの生成事象数を次第に増加させていきますが、従来の選別方法をそのまま用いていてはトリガーのレートは急激に増加してしまいます。そこで川口さんは、低運動量領域6 GeV以上の運動量に対応するテーブルについて、磁場の不均一性を考慮して最適化し、その動作検証及びシステムへの実装を行いました。このシステムにより、急増する初段エンドキャップ部μ粒子トリガーの余剰レートを低減し、より安定した物理データ取得を可能としました。
最後に受賞者である川口さんのコメントを紹介します。
川口 智美
川口さん、おめでとうございます!
ATLASからの公式発表はこちらからご覧になれます。ATLAS recognises the outstanding achievements of Collaboration members