文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究:多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究

検出器開発

計画研究 D01:高輝度実験に向けた先端的測定器の開発

本計画研究では、三実験プロジェクト(Bファクトリー実験、LEPS実験、J-PARC-E16実験)に参画する研究者が協力し、将来の高輝度施設における実験に向けた測定器開発研究を強力に進める。特に、三実験プロジェクトのいずれにおいても重要となる高性能の粒子識別装置と、高速読み出しシステムなどの開発を進め、将来の実験で実用化することを具体的目標とする。

粒子識別装置としては、申請者達が独自開発を進めてきた「TOP Counter」および「エアロジェルRICH」と呼ばれる次世代粒子識別装置を高輝度Bファクトリー実験装置に実装する(図参照)。TOPカウンターは、高精度研磨された石英(表面粗さ5Å以下)で発生したチェレンコフ光フォトンの伝搬時間(Time-Of-Propagation)を 50ピコ秒以下の高時間分解能で計測して粒子識別を行うもので、名古屋大学申請者達の独自のアイデアによる。また、エアロジェルRICHは、気体と液体の間の特異な屈折率(n=1.05)をもつシリカエアロジェルを輻射体とするリングイメージング型チェレンコフ検出器であり、申請者らが開発に成功した高透過率の疎水性シリカエアロジェルを用いた独自の検出器である。計画としては、初年度で新粒子識別装置の実機デザインの最適化や読み出し回路のデザインを進め、2~4年度には、プロトタイプ検出器の製作とそれに続く実機建設を順次進める。そして最終年度までに、実機インストールを完了、宇宙線や新実験の初期データによって性能を最終確認し、両検出器の技術確立を目指す。また、TOPカウンター、エアロジェルRICHのLEPS/J-PARCでの固定標的実験への応用についても検討する。

高速読み出しシステムとしては、高輝度Bファクトリー実験に向けて「COPPER」と呼ばれる高速パイプライン読み出しシステムの開発が進んでいる。本研究では、このCOPPERモジュールに搭載する半導体検出器用、飛跡検出器用、粒子識別検出器用のデジタル処理回路を三実験プロジェクトに参画する研究者で共同開発し、読み出しシステムの共通化を目指す。

こうした最先端技術の開発・実用化研究によって、三実験プロジェクトの検出器性能の改善と高輝度化への対応を進め、将来の高輝度実験施設における最先端の物理成果につなげる。素粒子・原子核物理研究では、最先端の物理成果は最先端の装置開発によって切り開かれてきたと言ってよい。本新学術領域においても、本計画研究の推進と公募研究の連携による検出器開発の精力的な推進が、ハドロン物理研究に関する新しい発見や知見につながると期待できる。

研究の進捗状況と成果

平成21年度
平成22年度
平成23年度
平成24年度
平成25年度

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